世界の中央銀行総裁、ワイオミングの山中に大集合 (97.9.3)



世界中の中央銀行総裁、エコノミストが集まる恒例の会議
(中央銀行総裁15人、FRB副議長、理事4人、地域連銀総裁7人、IMF、世界銀行、OECD、BISのトップ4人、首相1人、エコノミスト、学者など)

意義:世界の金融政策リーダーが一堂に集まり、情報交換できる時間的効率性自由時間も多く、トップ同士が仕事以外の場で人間的な信頼関係構築

国際会議の場でいつも感じる日本が世界に通用しない理由
@ 仕事が部下任せの為、自分で貪欲に情報収集や意見交換しない(できない)、
→ A 結果、英語に慣れず、会議で内容も理解できず、発言もなし、
→ B 世界の中で信頼・理解されず、影響力もつかず

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 日本ではあまり知られていないが、毎年8月末になると、米国ワイオミング州の山中、ジャクソン湖畔にあるグランド・ティートン・ロッジに、世界各国の中央銀行の現役リーダー達とOB達が集まってくる。

 今年はグリーンスパン米国連邦準備制度理事会議長、ジョージ英蘭銀行総裁、トリシェ・フランス銀行総裁など各国中央銀行総裁だけで15人、米国の連邦準備制度理事会の副議長と理事が4人、各地連邦準備銀行総裁が7人、国際機関ではIMF、世界銀行、OECD、BISのナンバー1又はナンバー2が4人、OBではコリガン前ニューヨーク連銀総裁、エンジェル前連邦準備制度理事会理事などが集まった。 それにカウフマン、サイナイなど著名民間エコノミストとフェルドスタイン、サックス、フランケル等著名経済学者も混ざる。 変わり種ではチェコのクラウス首相が参加した。

 まず木曜日(28日)の晩のレセプションとディナーから始まり、金曜日(29日)と土曜日(30日)は9時から12時30分頃までがシンポジウム、午後は適当なグループを作ってゴルフ、釣り、川下りなどに興じ、夜は再びレセプションとディナー。 今年のシンポジウムのテーマは「グローバル化した経済における金融の安定性維持」。

 これほどの人たちとアポイントメントをとって会おうとすれば、1ヶ月かけても無理であろう。 それが僅か2日半の間に目指す人とレセプションやディナー、コーヒー・ブレイクや午後の自由時間などに意見交換が出来る。 また、シンポジウムではその年のテーマについて、丁丁発止のディベートが聞ける。こんな貴重な機会は世界でも珍しいのではないか。

 私は幸いにも日本銀行の金融研究所長と理事の時代、そして日銀OBとなってからも、毎年招待されて参加している。 今年のシンポジウムでは、スウェーデンとアルゼンチンの中央銀行総裁と並んで3人で、「最近の金融危機から学ぶべき教訓」をテーマにパネル・ディスカッションを行った。

 部下に原稿を書かせ、秘書を従えないと国際会議に出られないような人は、ここへの参加資格はない。 総裁が自分でどんどん情報を集め、議論する生産性の高さは驚嘆するばっかりだ。日本が経済的に世界のトップクラスでありながら国際社会で発言力がないのは、何も英語が話せないからだけではない。 英語が下手でも内容があれば必ず相手は聞く。それが出来ないのは政官財のトップに立つ者(無論全員ではないが)が、英語に限らず、自分一人では何も出来ないからではなかろうか。
 これが出来ないような生産性の低い日本人は、これからの世界には通用しないだろう。