危うしビッグバン(97.6.20)
「外為法改正がビッグバンのフロントランナー」との位置づけに問題あり
『国内市場の規制緩和なしでの外為法改正』→金融空洞化(資金の海外流出)
しかし、『国内金融市場の規制緩和を進めたら』→金融機関倒産→金融不安
このビッグバンのジレンマを解決する策は
@ 規制緩和、税制の国際標準化推進で国内金融システムの国際競争力向上
@ 金融システム不安につながらないセーフティネットの強化、
改革の痛みを吸収するためのマクロ経済成長策
自社さ政権に@Aを実行する用意があるとは思えない
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【ようやく姿を現わした金融ビッグバン 】
金融制度調査会、証券取引審議会、保険審議会の金融改革に関する報告が、本年6月
に入って出揃った。 外為法改正案も本年の通常国会で成立し、98年4月から日本
の為替管理が完全に撤廃されることになった。 いよいよ日本版「ビッグバン」が始ま
る。 掛け声ばかりが先行していた橋本政権の「6つの改革」も、ようやくその姿を一
部現わし始めた。 今回の外為法改正は、為替管理に阻まれた不自由な国際取引を改
善して日本の金融空洞化に歯止めをかけ、日本市場をニューヨーク、ロンドンと並ぶ
三大国際金融センターの1つとして蘇らせるために、欠く事のできない対策であり、
むしろ遅きに失したと言うべきであろう。
【ビッグバンのジレンマ 】
しかし問題は、この外為法改正をビッグバンの「フロントランナー」と位置付けている
ことにある。
不便で使い勝手が悪く、コストも高い日本の金融・資本市場をそのままにして、98年
4月から為替管理を完全撤廃したら、日本の企業や個人は決済口座や運用資産を、外
貨建のみならず円建でも、便利でコストが安く、利回りの高い海外の金融機関に移す
ようになるだろう。 外国の銀行や証券などが1200兆円の日本の貯蓄を食い物にして
高笑いし、日本は空洞化に泣くことになる。
しかし、そうだからといって、98年4月の外為法改正に間に合うように規制緩和を
一気に行ったら、内外の金融サービス業の間で業態の垣根を越えた激しい競争が日本
を舞台に起こり、優勝劣敗が強まり、不良債権処理の遅れている日本の金融機関の倒
産が相次ぐかもしれない。
ここにビッグバンのジレンマがある。 為替管理撤廃に伴なう金融空洞化の急進展を、
指をくわえてみているのか。 それとも金融危機発生の危険を冒して、チャレンジン
グな規制撤廃を一気に行うのか。 これは、両方とも危ない選択である。 だからと
いって、外為法改正の実施を延ばしてみても、解決にはならない。 既に進行してい
る金融空洞化が、徐々に進み続けるだけだからである。
【ビッグバンのジレンマ解決策 】
解決策は、@一方で規制緩和と税制の国際標準化を急ぎ、日本の金融機関が負っているハンディキャップを無くし、日本の金融システムの国際競争力を高め、A他方で個別金融機関の破綻が金融システム全体の動揺を招かないようにセーフティ・ネットを強化し、また改革の痛みを吸収する受け皿として、マクロ経済の中期的発展を図ることである。
しかし、自社さ連立政権にこの@とAの政策を実行する用意があるとは思えない。 自民党と新進党との間で、この二種類の政策について「政策協定」を結ばない限り、ビッグバンの前途は危ない。